morの解析ブログ

解析疫学、リスクにまつわるメモや計算

「推定」のまわりをさぐる.教科書では「解析はMHにより行う、因子が多ければ重回帰を用いる」という風で詳しい例は少ない.独自(のつもり)な思いつきで具体に試行.
 数理を用いるべきアセスメントにも切り込む.

[解説]シリーズ1 オッズとオッズ比 

□ オッズ比ORの性質を調べる.調整前の段階でのORの観察をする.
ORは暴露群オッズと非暴露群オッズの2つのオッズの比である.


□ 準備:観光船事例のデータを使用し、主なメニューについて、マスターテーブルを作成し、未調整なORを因子ごとに計算しておく.
  観光船事例:
   患者98名(弁当喫食者220名)の食中毒事件である.
   喫食調査データが公表されており、食中毒調査のトレーニングのため使用される.
   (概要とデータで人数がちょっと違うがそのまま続けていく)


□ 観察:事例での発症者98、健康123、その比0.797であるから、発症/健康の帰無仮説はこの約0.8の数となっている.これを帰無仮説発症比とする.
・各暴露群に対するオッズをみると
        表1 
                水  お茶  佃煮  卵焼き フライドポテト の順に、
  暴露群の発症オッズ  0.53  0.73  1.14  1.12  0.88       
  非暴露群の発症オッズ 0.83  0.97  0.39  0.08  0.50 


となっている.帰無仮説発症比0.8に対して大きくかけ離れたオッズを示す因子は、佃煮、玉子焼きであり、水、お茶において、発症群のオッズが比較的小さい(非発症群のオッズが大きい)こともわかる.


  注:
   この段階では、交絡の検討を行っておらず、因果関係を推論することはできない.
    
□ オッズ比
 ORについてながめる.
        表2
           水  お茶   佃煮  卵焼き フライドポテト の順に、
  OR(未調整)  0.64      0.75     2.95      14.2          1.75 


    * ORは、表1において示した、オッズの比である.
      ORは、非暴露群のオッズを分母とし、暴露群のオッズを除したものである.


 ORをみると、先にみた、暴露群のオッズの大小関係が佃煮、玉子焼きにおいて逆転している. 
 このことは、暴露群のオッズを計算したら無意識に原因として他と比較しようとする観察、直感からは違和感が感じられよう.
 いずれの因子に対しても発症の度合いが同じだとすれば、ORの比もまた1を中心に誤差範囲で散らばるだろうというのが、自然でもっともな帰無仮説である.しかし、表2ではそうなっていない印象がある.そのため、推定解析を行っていくことになる.


□ 検定
 ここで検定は行わない.それは、各ORについての数値の問題を検討することは(計算上)できても、因子の、原因への関与を推論する手段にならないからである.層別解析によって交互作用、交絡検討、調整を終えた後、問題がなければ再び記述疫学的な(上のような)表を示し、Fisher直接確率を行って原因、結果の印象付けをすることは有用と思える.


□ オッズ比とは、
 「オッズ比(オッズひ、Odds ratio)は、ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度である.・・・・・」(wikipedia).


□ 相対危険
 別記事で扱っているように、相対危険とORを換算することができる場合がある.
 端的に、対照群を別に設けて観察された調査では、相対危険は計算できても意味がない.疫学でいうコホートとなっている場合には計算してみる.


→ シリーズ [解説] オッズ比の組成 へ

 




 

















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