少数例におこる問題:抑制因子の例
■ 少数例での事例解析上の問題をメモする.
因果関係を重回帰分析(多変量解析)で考えていくと、注目する因子のほかに、結果を抑制する因子を見出すこともある.また、疾病の抑制を問題にする薬品(がんと抗がん剤)、環境要因(野菜の喫食習慣)など、抑制する因子が注目すべき主役となることもある.それをサプレッサーという.
粗な方法でもサプレッサーと思しき因子が浮かぶ.また、同時に行う(のがよいと思うのだが、)回帰・調整・層化の結果、それが複数あるらしいとなると、さらに仕分けをすることになる.
■ 納豆オクラ事例を使う.生起因子納豆オクラとして、2日間にわたる食事メニューについて解析が可能である.
■ 解析
一般に粗オッズ比、相対危険、回帰係数からの危険などによって進めることになる.
結果、生起因子と同時に提供された、2品が喫食cludeORからサプレッサーである可能性があった.2品のオッズ、生起因子で調整したMHORはつぎのようであった.
パン 牛乳
曝露者の オッズ 0.18 0.94
非曝露者 〃 3.26 1.73
cOR 0.05 0.5
MHOR 対生起 0.47 0.92
さらに、MHORのCIをみると、
パン 牛乳
MHOR CI 1を跨ぐ 1を跨がない
牛乳ありなしで パンあり無しで
左右される 左右されない低値
パン、牛乳の関与程度は、粗な方法によるcORと、ある因子との調整(2層ではあるが)により計算された共通ORとでは異なっている.
主因で調整したMHORは2品いずれも抑制因子の疑いを否定できないが、ここで強いサプレッサーというために、係数の大きさをみるべきか、CIをみるべきか迷う.
glmによる4因子モデリングから推定係数は、つぎのようである.
パン 牛乳
係数 0.398 -0.8564
係数pr 0.74 0.24
今度は、係数、prとも牛乳が強くみえる.
牛乳について抑制因子との疑いをもてることは収穫とはいえ、断定的な結果には至らない.2品における粗指標、調整指標値の逆転は、みかけに原因を求める前に、例数がどうなっているかも忘れないでおきたい.