morの解析ブログ

解析疫学、リスクにまつわるメモや計算

「推定」のまわりをさぐる.教科書では「解析はMHにより行う、因子が多ければ重回帰を用いる」という風で詳しい例は少ない.独自(のつもり)な思いつきで具体に試行.
 数理を用いるべきアセスメントにも切り込む.

Campy残存シミュレーションの裏付け RA8-2

■ 工程によりcampy残存に違いが現れることを強調している.相互汚染を防ぐための区分処理や、塩素処理といった対策が効を奏しないことを認識し、そのうえで見逃されている他の工程管理法に注意を向けるべきと考えるからである.過去記事には、具体的に工程内汚染:鶏群における保有状況から、処理工程中に汚染が非保有鶏肉に及ぶことを問題とする視点に対しては、菌の数に着目すれば、危険度への関与が小さいことを指摘した.また塩素剤一辺倒な対策に満足できないことに注意をおきたい.
 高度管理研究の結果から、(いいままで注目されない)他の工程指標が(意外な面で)強い関与を持つことをシミュレーションでも示した.
 それらのうち、汚染についての資料を見つけた.汚染率と残存菌数についての以前のシミュレーションを裏付けるものと思われる.
■ 工程内汚染データ
 過去記事の通り、工程内汚染が、その程度(菌数)において、危険度の小さいことをシミュレートしたが、それを裏付けるようなデータがあった(後で見つけた).
  農水:http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/kekka/attach/pdf/chikusan-1.pdf
 汚染を受けた方の”と体”1つあたり60cfuであったという.と体1つがkg単位のものだから、肉100gあたりでは、2,3個といったところか.この値は、シミュレーションで目安とした危険な菌数をはるかに下回る.(中毒例での残品菌数をもまた下回る)
 しかも、それは処理直後の菌数というから、流通中にさらに菌数が減ずる.つまり、これは注目すべきリスクの主役でない.
 他の鶏から汚染を受けた肉(例えば、チラー水、機械を介して)のリスクは小さく(WHO、RA)、実例ではほとんど問題にならない程度だろう.
・ チラー水との汚染因果関係
 上資料ではチラー水にも同じ菌がいた、とする.このような水が他の肉を汚染する可能性があることは間違いないが、しかし、非常に菌数が低く、ことさら問題にする理由がない.
 別資料 200100895A0006.pdf では、チラー水の汚染が肉の汚染と原因とし、その肉の汚染率は100%、菌数は56~4400〈 / 100g!とある.別記事で、詳しく記しているが、水による汚染はこのような高濃度に肉を汚染するとは決して考えられない.
・ 塩素処理が、ことcampyについては著効を示さない.(水中の菌にはある程度有効)
 以前の記事のように、水温は、campy残存に影響するパラメータといえる.これは、実験、観察、データを吟味する上で、結果に影響していると考えるべき条件である.したがって、少なくとも今後、それを因子として取り入れた考察を行う必要を強調したい.

 概して農水データは、最小限な既存の認識追認の勢いしかなかった.
■ 陽性鶏群の鶏が陽性鶏群の肉を汚染していることが、危険性を中心にしたアプローチのターゲットであることを再度強調したい.


■ 工程内コントロールが不可なもの
 上の報告では、肝臓の菌数も記されている.内臓の危害は工程中では減らないと考えられる.このブログでは、肉の方は工程管理で菌の低減が可能という視点であるが、肝臓などはそれとは異なる.工程内コントロール対象外と認識する.つまりは、これは当分衛生処理の課題とはとらえられない.

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