morの解析ブログ

解析疫学、リスクにまつわるメモや計算

「推定」のまわりをさぐる.教科書では「解析はMHにより行う、因子が多ければ重回帰を用いる」という風で詳しい例は少ない.独自(のつもり)な思いつきで具体に試行.
 数理を用いるべきアセスメントにも切り込む.

[解説]5 推定にゆがみをもたらすもの

□ 観光船事例をglm logisticと層化解析によって推定してきた.
□ 生起因子(真の原因)と抑制因子からなるシンプルで自然に解釈できるモデルにたどり着いた. [解説]4
□ みかけを招いた他の(実は多くの)因子と生起因子とを峻別する方法を記す.
□ 生起因子とその暴露が結果をつくるという面に着目する.
 生起因子とみかけを示す因子の暴露状況を明らかにして、いかにみかけが形成されるかをみる.つまりは、生起因子の曝露と他の因子の暴露状況の重複を調べる. 
□ 先の例では、glm処理後も比較的大きな係数を示した因子(佃煮ほか)は、生起因子との曝露相関が比較的強い.
 生起因子との暴露相関係数をx軸に、推定係数をy軸としてプロットする.下図に模式的に示す. 
      
        

       図 

 
・生起因子と共通な曝露による、危険性のみかけ
 Aたまご で示す点は、自身との曝露相関係数1であり、係数が大である.それと近い点はAとの曝露相関が強く、大きめな係数をもつ.(自体の危険性は少ない:前記事詳述.)
・生起因子との共通な曝露による、危険性の抑制
 水 で示す点は、Aとの曝露相関があるが、係数は逆:- である(つまりサプレッサー).([解説]シリーズでは、お茶についてあまり持ち出さないが、水の近くにお茶がプロットされ、これもサプレッサーとみられる.)


□ アウトブレイクにみる生起因子は、いろいろな経路をとりうるが、食中毒、経口感染であるかどうかを検討することになる.そのような場合、病因物質は単一、経路はごく少なく、時系列上単一暴露となる例が多い.したがって比較的単純なモデルが当てはまることが多い.その際、みかけを形成するのは、曝露の重複であることをこの事例で知ることができる. 
 病因論的な検討で玉子焼き、鶏唐揚、鮭の塩焼からは、原因食の調査で毒素が検出されたことが明らかになっている.しかし、疫学的に生起に関わるのは、玉子焼きのみとなった. 
 わずかな残品の定性的データは、疫学的調査による推定に及ばないともいえる.逆に疫学的解析は、最も有用な情報を明らかにする.

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