morの解析ブログ

解析疫学、リスクにまつわるメモや計算

「推定」のまわりをさぐる.教科書では「解析はMHにより行う、因子が多ければ重回帰を用いる」という風で詳しい例は少ない.独自(のつもり)な思いつきで具体に試行.
 数理を用いるべきアセスメントにも切り込む.

改 ”交絡”と決めないひとつの理由~納豆オクラ食中毒事例

*  多アクセスの記事を再掲する 
■ 納豆オクラ事例が交絡の調整法の例題として解説される.この事例の生データは公開されている.取り上げる調整関係因子は、納豆オクラとめしであり、分析疫学的な扱いである.これを題材に疫学風に交絡と標準化の見方で解き明かしたい.
■ 生データ;層化、回帰分析
 この事例の生データをダウンロードし、logistic分析できるよう数値化、MH一斉分析(独自開発、2×2表、粗OR・RR、2因子間の総当たり層別解析;調整OR・RR)によって、整理計算した.

 症例定義を生データのままとすると、注目メニュー;納豆について114名、めしについて、113名の2×2表が作成できる.
 生データから直接作成した2×2表では、暴露=発症59(人),非暴露=発症8,暴露=健康4,非暴露=健康43であり、めしでは、同様に、64,3,21,25(人)である。それぞれ、粗ORは、納豆79.3、めし25.4程度となる.
 層別解析はMH一斉分析表では入力と同時に得られ、次の結果となる.
  納豆
   めしありなしでは、めしありOR 58 ,めしなし 12  
    cOR 77.44、 MHOR 46.4   (12.59-170.9):95%CI
  めし
   納豆ありなしでは、納豆ありOR 19.3、同なし4.0、
    cOR  25.4、 MHOR  4.95、(1.05-23.34) :95%CI


 この結果のみからは、いずれのメニューも有意であり、したがって、疾病に関与したことを否定できない. In Natto-Okura foood borne disease ;Salmonella sp.,Natto-Okura with high risk,Mesi also with risk in M-H OR.
 同一事例を慎重に検討する際、症例定義を変えてみるということが行われ、生物学的な調査を含めて、事件処理され、原因として決定する手順に進むことになるが、解析疫学風にもう少し検討してみる. re-grouping the case,risk between 2 factors is not clear in Mantel-Haenzsel method
 ロジスティック解析では、因子納豆からゆで卵までの19日メニュー9種についてモデル化すると、
 係数は、
   納豆 -4.24 ***;有意、
   めし -2.67 . ;pr:0.066 
 であって、納豆の関与が極めて強く、めしがこれに次いでいる.
 この症例定義では、推定結果はMH調整結果とほぼ一致する.
logistic regresion coefficients indicate same tendency
 (交互作用項検討を省略)
■雑誌解説データ
 雑誌解説データは、上の生データとは対象者が違っているようで、88名と大幅に減っている。生データから何らの抽出をして解析(症例定義)したようにみうけられる。これを層別解析に持ち込んで解説がなされるが、各セルの中に、0や1が頻繁にあらわれる。解析結果は、めしの調整ORが大幅に下がることを指摘し、原因食品を推定するなかで交絡調整を説明するストーリーである.
めしおくら
・ 2×2表セルに頻繁に0,1が現れる、このようなデータから、glmでは何が起こるだろうか。
 雑誌で解説するデータは、直接手に入れることはできないから、雑誌で取り上げる2×2表を再現したデータを作ってロジスティック回帰分析をした.
 納豆の係数は-22、prは0.99となり、発散。めしの係数は-1.55、pr0.27となり、こちらも到底有意性を語れる結果にならない。つまり、glmによる調整的な係数推定からは、関連をいえないとの結果になる。むしろあまりにも因子と暴露が偏ってしまっており、解析に持ち込むことがためらわれる.
 ちなみに、症例定義外のものに層別解析を行うと、ここでもいずれのメニューも有意に原因に関係することを示す調整値が得られ、いずれの因子も原因であることが否定されない.
・この事例のみかけは次のような状況から起こっている.

 



 上の図(表)で、オクラの曝露がない者の、めしの曝露と発症をみると、めし曝露1/18,めし非曝露1/24のように、変わりがない(めしには汚染の偏りを想定しないでおく).すなわち、めし自体の発症への貢献がほぼないとわかる.


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 * このような、層化による、因子の影響度を比較する方法は別記事でも行っている:コントロルグループの充分性による交絡の定義(佐藤氏)を考えのベースにして検討.
 層化により、コントロールグループとみなせる観察値ないし期待値と因子A,Bを比べれば、かかわりの深い因子A,Bいずれかが浮かび上がることになる・・この記事の事例.またA,Bそろった場合に効果が顕著に浮かぶ場合・・交互作用;などのように整理できる.
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 事例に戻る.オクラの曝露は、めし曝露者にほとんど偏り、発症は40/3と強い.一方めし非暴露オクラ非曝露1名のみとなる. if adequacy of the control group is reliable , seeming effect can be avoid
 つまり、この事例のみかけは、
  ”めしに危険がみえない” に加えて、”オクラの曝露が大部分めしと重なる”
  さらには、”オクラを食わない人が少なすぎる”
ということで起こっていた.
 めしに、独立な生起因子の性質が探しえないので、この事例のめしのみかけは、単純に”暴露の偏りによるみかけ”といえる.
 taking note Natto-Okura non-exposure group:few risk in Mesi exp.g. then, true risk factor is Okura in 2by2sheets stratified analysis  



 もともとの事例に即した公開データを用いた解析結果と、雑誌解説でとりあげるデータによる結果は、glmによって有意性がなく、疑わしさが否定できない程度の確率であった.症例定義、使用するデータの選択によって、データが薄くなり、検定上不安定になったと思われる.
 (層化して表を眺めることを忘れずに・・)

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 この記事は、「交絡”と決めないひとつの理由~納豆オクラ食中毒事例 - morの疫学 - So-net」morket.blog.so-net.ne.jp/2015-12-09-2 の、ブログ閉鎖に伴い、改定して記載したもの.

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