morの解析ブログ

解析疫学、リスクにまつわるメモや計算

「推定」のまわりをさぐる.教科書では「解析はMHにより行う、因子が多ければ重回帰を用いる」という風で詳しい例は少ない.独自(のつもり)な思いつきで具体に試行.
 数理を用いるべきアセスメントにも切り込む.

アウトブレイク調査(2)ブログ移転

・アウトブレイクでは、疑わしい因子は複数、ときに相当数現れる.食事についての調査を疫学調査と切り離さない.:平成22年3月30日薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 発文書は、”食品衛生部局及び感染症部局の共同調査の推進”を述べている.また、”一元的な調査票のガイドラインを示す”ことも提言している.


 因子:
 某氏と接触したこと、〇場所を通過したこと、〇室に入ったこと、〇料理を摂食したこと(多メニュー)、〇薬を服用していたことなどなど.
 層化段階で、因子は特定されるかもしれない.
 一斉2×2表でながめ、リスキー、抑制的両方の疑いとともにMH調整値を観察し、疑わしい因子を容れてモデル化する.MH法による一斉調整を行えば、モデル化の因子が絞られよう.


・記述疫学
 3要素: ①時間②場所③人
 感染性のアウトブレイクでは、時間経過にそって人ー人感染が連鎖する様子が現れることがある.
 時間(場所、人)記述は、仮説を立てるために使う.流行曲線を描き、単一暴露を疑わせるとしても、その十分条件ではない.
 発生場所が時間発展していくのが、感染症の特徴といってもよいが、単一な曝露が多い食中毒でも、その後二次感染が広がることが珍しくない.逆に、単一の感染者が、食品を汚染すれば、感染症から食中毒の様相がみられる.


 場所的な要因は、地域的であったり、学級、棟単位であることなどさまざまであることをあらかじめ理解しておく.空調装置などの作動範囲もまた、場所的な因子となる.一定時間、空間を共有する、公共交通手段も考え得る. 
 とくに食事:
 食事を疑うとき、団体の同一メニューは、数的に整った記述ができるが、個人団体入り乱れ、メニューもカフェテリア方式となると、後ろ向きコホートとは限らず、ランダムな後ろ向き症例対照のようにもなる.
 公表資料は、原因を「○○の食事」「○○の料理」と、メニューを特定できない(しない?)例が非常に多く、問題と思われる.というのも、メニューのうち疑いのある食品を絞ろうとしないなら、その食品に対する必要な予防策が採れない.


 前述提言で、
”患者が確認された場合には、① 原因食品が特定されず調査中であっても、加工方法等から汚染の可能性が高いと判断される食品・・流通・販売を一時的に見合わせるよう事業者に対し協力を求めること”
 としており、健康被害危機事例対応における疫学調査の活用 -- O157:H7 集団発生対応における米国とわが国の比較からみた今後の課題 --では、
”病原菌そのものが細菌学的に証明されなくとも,原因食品を疫学的に早期に特定することが可能であると考えられた。また,そのような事例に対して有用となるような疫学調査指針を提示することが,重要な課題”
と指摘している.あきらかに、食品を絞る方法による対応が求められるためである.また、被害拡大を防止する観点から、素早く推定、やや網を広げた検討が必要であることが注意点である.


 となると、喫食調査から、メニュー個々にORなり危険度を示せるような訓練をしておくべきである.”○の食事”としてしまうならせめて、他の因子とのORや危険度比較がほしい.また、後ろ向き研究であり、みかけが避けられない状況なのだから、”みかけ”を調べ調整してみるべきである.
 むしろ、調整的に検討しなければみかけは見えないと考える.


 プログラム選択に話を戻すが、エクセルでの一斉調整では、疑わしい因子と、疑わしさを否定できない因子を列挙することができる.(製品でなく計算式を入れた自作シートとして.)
 また、コホートと症例対照的な2通りに即対応できるようあらかじめ計算式に組み込んでおく.
 epi-infoは、ちらりと見る限り、一斉の調整ができそうもなく、周りの因子のリスク関係(+か、0か、-か)は、概観できない様子.
  
 なお、解析疫学で疑わしさがあるものは、広く慎重な立場で対処すべきことになる.その信頼度が統計的に強い”有意”であることにこだわると、かなり怪しい因子を逃す危険が生まれることがあるので留意する.からとて、曝露の重複がある限り、調整したリスク値の接近したものを明瞭に区別できるはずはない.


 補強・要点
 ・記述疫学は仮説を立てるために使う そのまま、結論に結び付けるな
 ・食事を因子にするなら、メニューを1つ1つ因子とする
  便宜的にくくったメニュー(前菜、メイン、デザート・・)で検討したら、あ
  やしげなくくりを再度解析すべし
 ・原因物質、病原体やその証拠の証明ありなしは、解析疫学的結論を左右しない
  
 前記事の補強・要点
 ・因子のうち ややあいまいな影響傾向を切り捨てない 検定はするな! 
 ・みかけ上のリスク値を交絡の影響を含めて調整の手法により調べる技術をもつ
 ・その過程で、逆なリスク値をもつ因子が現れる場合がある(ヨーグルトなど)
  これも調整の対象とし得る
 ・調整後リスク値が有意でもその事件の主要なリスク要因とは限らない
 ・層化して常識的な総括が必要(glm推定の宿命?)
[関係report] s scr by N&mor (非公表)

×

非ログインユーザーとして返信する