morの解析ブログ

解析疫学、リスクにまつわるメモや計算

「推定」のまわりをさぐる.教科書では「解析はMHにより行う、因子が多ければ重回帰を用いる」という風で詳しい例は少ない.独自(のつもり)な思いつきで具体に試行.
 数理を用いるべきアセスメントにも切り込む.

アウトブレイク調査(3)メニュー詳細調査の必要性

・解析疫学
[後ろ向き研究(観察研究)]
 リスク値の評価であるが、RR、RD、ORにより行う.
  相対危険、危険度差、オッズ比のこと・・.


 ここまでは決まっているとして、食中毒の解析で、”調整を行うべき”と明示されない.後ろ向きであるから、かならずみかけが含まれる.WHO標準疫学を適用すべきで、調整が必要かをみるために、調整方法を用いて解明することになる.また、調整したほうが、より尤もらしいはずである.
 調整値の選択にあたって、事例に後ろ向きコホートが適用できるか、症例対照となるか、吟味する.


[因子] 因子を極力あつめる必要がある.リスクとなりうるものをとらえるのであるから、提供品目に限定すると意味がなくなる.行為(特に食品と関連しない施設利用、接触(他グループのヒト(ときに発症者)との曝露、経路が問題である.


[症例定義] 2,3試してみる.
{x軸、y軸} 因子を”原因”次元のパラメータ、症例定義の設定を”結果”次元のパラメータとしてみると、これらが直交な座標軸となって、曝露-生起が成り立っているとみえる.ここでは、調整は原因次元x軸の上の検討となり、.結果次元y軸での検討の方法は、症例定義ただ1つに限られる.ために症例定義には、重みがある.


[みかけ]
 みかけにかかわる因子、注目する因子を選びだせば、
  ・みかけにかかわる因子で注目する因子を層化する
  ・注目する因子のMH,glm による調整値をあげる
   交互作用があれば対処する
  ・みかけが現れた原因など因子間関係をできるだけ説明する  
[調整] 調整を行うメリットを考えると、
  * みかけを除ける
    疑わしい、複数の因子の影響度合いを調べる
    (真に疑うべき因子を推定できる)
  * 他の因子の関わり;サプレッサー、交互作用を同定し、影響を調べられる


 事例解析の本旨は、もちろんみかけを除くことにある.
 ある程度の例数から素早く因子を特定して対処することは、起こりうる事件の拡大防止に役立つことがあるから、必須となる.また、他の疑わしさが否定できないモノの流通が”不当な”影響を受ける可能性もなきしもあらず、であって、あちらをたてれば・・の関係の中でバランスが求められる.
 後者の真髄は、因子間の関係が窺え、気付かなかった関係が予想されることであり、さらには、含まれない因子の影響すら観察に入ってくる.意外な奥深さが感じられることがある.
 サプレッサーは、ある摂取品が感染、毒性に対抗する性質があったり、希釈、吸収緩和、競合作用・・により、生起確率を下げることがある.これは、生起の効果を変動させる因子であるから、生起因子のみ近視的に追及することにならないよう注意すべき.


[調整手段]
 リスク値の調整・比較(主なものとして2つとする)
  ・MantelーHaenszel要約RR,OR (MHと略)(層化)
  ・glm重回帰分析による係数 (係数などと略)(交互作用項投入)
 MHでは、有力な因子間で層化し、因子のあるなしによる値から要約された値を得て評価する.単に層化して比較しただけでも傾向はつかめる.
 glmにより推定される係数は、ORに変換できるから、性質としてMHと同様な意味がある.glmはキレのいい推定値を返すことが経験される.しかし、完全な結果が求まるものではない.MHが中規模で層化に制限がかかるのに対して、glmでは、とりあえずそのような心配なく、解析結果が得られる.
 glmでは、交互作用項投入により、因子の性質の比較ができる.調整手段は、ほかにも様々ある.このブログの目的は、主な因子をあぶり出し、眺められるようにすることなので、これを中心とし、標準化はモデルの適切性をみるなど必要なときに取り上げる.
 [合理的説明] 因子の考察にあたり、生起、抑制の考察を合理的にする必要があり、生物学的な説明により、生起との関係づけを補強するよう心がける必要がある.なぜなら、解析疫学で因果関係を推定することはできても、Hill原則からは、不十分であり、もともと因果関係を証明する手段はないからである.もちろん、食材からの病因物質の検出は、試されるべきとしても、”存在が証明されること”が必須でない.
 別記事で詳しく述べる観光船事例においては、事後検査でtoxin(+)の食品が複数あらわれたが、解析疫学からは、必ずしもこれと一致しない結果が導出される.こういった例も当然あって不思議でない.さりながら、生起因子である玉子焼きがtoxicだったのだから、同一梱包(おそらく調理から詰め合わせ作業もかなり共通しており、食品相互の汚染が起こりえた)食材のいずれかが、相当汚染されても不思議はなく、残品と現実の食材の汚染状況は必ずしも一致しないと気付くことが大切だ、となる.食品検査一辺倒で陥りがちな固定観念のようなものをおさえながら冷静に解析を進める.むしろ、食品検査結果は、情報の一つとしておいておく.


 glmは、交互作用を投入しないモデルでも、その係数は、調整された値と同等に扱われ、信頼性がある(港氏の説明をそう解釈している).実際そのような結果を得る.ただし、すべての推定結果が応用(標準化などの厳密な推定的試行)に向くかといえば、”適切なmodelであれば”という限定がつくと考える.それは、glmの切片の変化に窺えるやや複雑な性質、交絡や、修飾といった問題、過適合に対処していく必要があるためである.そのため、層化と調整(glm含む)いずれも検討していかなければならない.
 前記事までの補強・要点
 ・記述疫学は仮説を立てるために使う そのまま、結論に結び付けるな
 ・食事を因子にするなら、メニューを1つ1つ因子とする
  便宜的にくくったメニュー(前菜、メイン、デザート・・)で検討したら、あ
  やしげなくくりを再度解析すべし
 ・原因物質、病原体やその証拠の証明ありなしは、解析疫学的結論を覆えせない
 ・因子のうち ややあいまいな影響傾向を切り捨てない 検定はするな! 
 ・みかけ上のリスク値を交絡の影響をふくめて調整の手法により調べる技術をもつ
 ・その過程で、逆なリスク値をもつ因子が現れる場合がある(ヨーグルトなど)
  これも調整の対象とし得る
 ・調整後リスク値が有意でもその事件の主要なリスク要因とは限らない
 ・層化も行い、常識的な総括が必要

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