morの解析ブログ

解析疫学、リスクにまつわるメモや計算

「推定」のまわりをさぐる.教科書では「解析はMHにより行う、因子が多ければ重回帰を用いる」という風で詳しい例は少ない.独自(のつもり)な思いつきで具体に試行.
 数理を用いるべきアセスメントにも切り込む.

相互汚染の危険は生起確率にcampy菌数分布を乗じ小となる_5

■ 前記事で、保菌鶏(陽性鶏群とも呼ぶ)群の次に処理される陰性鶏群肉の汚染は、菌数において保菌鶏群肉より低めになることをみた.
■ 陰性鶏が処理過程で汚染される”相互汚染”という事態は、本当に重要な問題かを考えている.
 確率で調べてみる.すると、陽性鶏群の割合(陰性鶏群の割合)との兼ね合いが、相互汚染の生起確率を決めるため、相互汚染は危険の低いことが導かれる.
■■  相互汚染が起こる確率
 生きた鳥の保菌有無によって処理後に陽性鶏群肉・陰性鶏群肉が汚染することの起こりやすさをみれば、
    陽性鶏の割合 =  0.7 ;陽性鶏が処理される確率


であり、陽性鶏群の後に陽性鶏群が処理される確率は、0.7を自乗して約0.5となる.組み合わせの中で最も起こりやすいのが陽性・陽性のものであって、確率からみて中心課題となる.一方、 


 陰性鶏の割合 = 0.3 ;陰性鶏が処理される確
            ;データ出典:評価書表4:大規模な調査データを丸めて使用
 であるから、陽性鶏群の後に陰性鶏群が処理される確率は α×β ≒  0.2であり、陰性鶏の肉が陽性鶏群の処理後に処理で汚染される確率;機会は少ないということになる.それ以外の確率はその残余であるが群を跨ぐ問題はない.




 このことは驚くべきことだ.相互汚染の問題を取り上げたがゆえに、即ち起こり難い事象の問題に視野が狭まってしまうことになる.
■ 相互汚染リスクの問題は、市販ベースの菌数の分布がどう影響されるかがかかわるが、一方でそれが起こる確率をも考慮する必要がある.その確率を取り込んだ危険示数のようなものをつくれば、
    相互汚染の起こる確率 × 危険な菌数のものが占める割合
となる.言い換えれば、”意味ある汚染が起こりやすければリスクを増し、起こり難ければ、激しい汚染があっても全体の中でのリスクへの影響は大きくない”となる.


 実際のデータからは、0.5の高確率で陽性鶏群から相当汚染肉が出る一方、相互汚染されて出てくるのは、菌数が2オーダー下でさらに確率は0.3にとどまるという事実である.


 記事_2で見たように汚染率の大小はそのまま危険を反映しない.ブツが発症菌量を超えるのは、相当高い菌数のものに汚染された場合に限られる.
 なお、評価書表19から先の記事で求めた、市販レベルのブツにおける、危険なものの割合は0.642であっておおむね上のことと符合する.
*先の記事で調べたpoisson分布となるメカニズムは、
 ①いったんかなりの汚染を受けてはいるが、汚染のきついものがかなりの菌数を保持、生残する. ②一方で比較的軽微な汚染のものは、酸素等の影響で危険菌量、検出限界を割り込む.
 結果、陰性にとんだ検体群=製品が形成されpoisson分布を示すと考える.

 一方、相互汚染の確率は、現実の陽性鶏群の率と組み合わせから単純化して調べると比較的小さく、かつ菌数が少ないからメインなリスクとならない.
■ 対策
○ campyのみの相互汚染防止について
 相互汚染を防いでも発症菌量を超えるものの割合は、おいそれと減らない.「相互汚染により陽性”率”が高まり、”その分”危険が増す」と結論するのは、ことcampyについては科学から飛躍した短絡ではないか.実のところ、相互汚染の結果はリスクをあまり上げないのだから.すでに提案されてしまっているが、区分処理などといった対策を提案する際は慎重な検討が求められる.
○ 相互汚染対策
 工程において区分処理を行い、相互汚染を減らした場合に”汚染率”は減るだろう・・と期待することの危険を考える.
 一見自然な期待にみえるがcampyの場合はともかく、何種の菌についてそのような仕分けをしなければならないか、ある菌は陰性でも別の菌は陽性であるという事態をどう解決するか、campyの低率化を図れても、サルモネラの相互汚染は放置、悪化させてしまうのではないかといった疑問がわくのである.
 数多くのケースについて相互汚染を考えて順番を決めようとしても決められるはずはない.この点で区分処理による相互汚染防止は、現実複数の菌が保菌される状況では行き詰まりとなる.
○ 当面、しかし当分の間の問題は汚染鶏群の肉が、発症菌量に達する工程内汚染をどう下げたらよいか、である.区分処理ではなく、生産現場と工程の条件(数値)についてのアプローチではないか.
* 《 定性的なデータを活用する試行はここでは記さない.》

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